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100年後の映画館のために

映画館元副支配人による映画と映画館をめぐるインタビューの記録

2023-05

幸福で平和だったら、映画は撮らない(若松孝二監督)

主演・寺島しのぶさんが、ベルリン国際映画祭で最優秀女優賞を
受賞したことも話題を呼び、現在、全国のミニシアターで驚異的な
大ヒットとなっている若松孝二監督の新作「キャタピラー」。
第二次世界大戦で四肢を失って帰還した夫とその妻の生々しい日常を
通じて、戦争がもたらす悲劇と本質をえぐり出した反戦映画です。
この夏、最大の話題作を是非お見逃し無く。

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第15回:若松孝二さん(映画監督)


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「キャタピラー」
横浜シネマ・ジャック&ベティにて絶賛上映中!!

上映情報はコチラへ



★戦争はゲームではない

Q:前作「実録・連合赤軍 あさま山荘への道程」でも大変お世話になりました。
また超話題作を上映させていただき感謝しております。作品が必ず話題を呼び、
お客さんを動員する作品を作り続けているということは本当に凄いことです。こ
れまで監督は常にその時代のテーマを取り上げ、その時代と向き合う作品を作っ
てこられましたが、前作と今回では過去の時代を総括する作品を作りました。こ
れはどういう意図があるのでしょうか?

若松:学校の教科書で教えないことを、映画と言う武器を使って皆さんに観ても
らおうということです。今回の「キャタピラー」では、戦争はぜんぜん関係のな
い人を殺すものです。もしかしたら自分も殺されるかもしれない、戦争はゲーム
じゃないんですよということを言いたいのです。戦争とは何か、原爆とは何か、
沖縄で何があったのかということを一人ひとりがもう少し考えてみるきっかけに
してほしいのです。
 やっぱりね、自分が観たいとも思わないものを作るから客が来ないんですよ。
お金とって見せるわけですから、僕は常に自分が絶対的に観たいと思い、かつお
客さんも観たいだろうという意識で作ってるからね。会社から頼まれたからとか、
漫画の原作でやろうとか、イケメン使えば若い子が来るんじゃないかとか、それ
で映画作って結局客が入らないって嘆いている。面白くないから入らないんです。
誰が観ても面白いと思える映画を作らなきゃダメなんです。客が入る映画は黙っ
ていても入ります。

Q:監督は「連合赤軍」や「戦争」といった、多くの人に訴えかけるテーマを題
材に映画を作りましたが、これらのテーマは人によっては直視できないようなそ
ういう歴史でもあるわけです。そのような重みのあるテーマを扱うのは、監督に
とってもやはり大変なことだったのでしょうか?

若松:ものすごく大変なことですよ。犬の映画や、ガンで恋人が死ぬとかそう
いう映画でも作れればどれだけ楽かと思います。でも僕がそんなもの作っても誰
も観に来ないでしょう? 次は何を撮るんだろうと期待されている面もあるから、
変なものは撮れません。みんなが観たいと思うものは何かということを意識して
脚本作りをやっていますね。


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大西信満さんと若松孝二監督

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テーマ:インタビュー - ジャンル:映画

劇場体験は人生に何らかの影響を与える(伊藤孝司さん)

『ヒロシマ・ピョンヤン』は、ヒロシマで被爆した北朝鮮人の親子を取材した
ドキュメンタリー映画です。北朝鮮人の被爆者といわれてもあまりピンとこない
人が多いのではないでしょうか。この作品は知られざる事実を私たちに突きつけ、
戦後65年経ったいまもまだ戦後は続いているということを改めて認識させて
くれます。8月は映画を通じて戦争について考えてみてはいかがでしょうか。

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第14回:伊藤孝司(『ヒロシマ・ピョンヤン』監督)

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『ヒロシマ・ピョンヤン』
シネマ・ジャック&ベティにて上映中!
~8/13(金)12:40~14:15
以降の上映予定は公式サイト

★北朝鮮で暮らす被爆者のことを知っていますか?
Q:この作品を作った経緯を教えてください。

伊藤:81年から広島と長崎を取材するようになって、韓国人・朝鮮人の
被爆者がいるということを初めて取材するようになりました。私はこれまで、
日本がアジアに戦争で及ぼした被害について様々な対象を取材してきました
が、実は最初にまとめたのが『原爆棄民―韓国・朝鮮人被爆者の証言』(1987年)
という、韓国人、朝鮮人被爆者の問題を扱った本でした。この問題はジャーナ
リストとしての私の原点でもあり、今回の映画はその原点に帰ってきたという
思いがあります。
 95年以降、デジタルビデオカメラを手に入れて映像でも記録するように
なりました。音声を残していく必要性を感じたからです。テレビでも映像を
発表してきましたが、テレビだとどうしても視聴者からの反応が伝わってこ
ないので手ごたえが感じられませんでした。また、撮ったものが短く編集さ
れてしまうことにも不満を感じていました。そうした中で新しく自分の作品
を作ろうと考えたとき、自分の原点である被爆者をテーマにしたものを撮る
ことにしました。

Q:作品のテーマや題材はどのように決まったのですか?

伊藤:2007年にこの映画の主人公である李桂先(リ・ゲソン)さんが、
日本に被爆者健康手帳を取りに来るという話がありました。北朝鮮との国交
がない今、在朝被爆者が例外的に来日するということで関係者はかなり期待
したのです。このとき、この出来事を映画として記録できないかと考えまし
た。当初の計画では、まず平壌(ピョンヤン)に行き、彼女が日本に来るまで
を追い、来日して広島の母親と会い病院に行って帰国するまでを記録する予
定でした。ところが、李桂先さんの同行者の入国問題で来日は実現しません
でした。いったんは諦めかけたのですが、在朝被爆者は唯一、国が手をつけ
ていない被爆者問題という状況もあり、これは絶対に自分がやらなければな
らないと思い直しました。

Q:李桂先さんを主人公にしたのはなぜですか?

伊藤:12人の在朝被爆者を取材した中で、健康状態がもっともひどく、
手帳を巡る問題や、広島のお母さんに会いたいと熱望されていることなどから、
李桂先さんが適任だと判断しました。センセーショナルなシーンは撮れないので、
一人の在朝被爆者の日常を淡々と撮って、彼女の思いや病気の状況、在朝被爆者
問題の全体像を明らかにする作品にしようと考えました。

Q:撮っていく中で監督ご自身の気持ちに何か変化はありましたか?

伊藤:日本にいると、北朝鮮の人たちの暮らしはまったくわかりません。
韓国では、かつては北の人たちは頭に角が生えているなんて教えていた時代が
あったくらいです。でも、李桂先さんのアルバムを全部借りて平壌のホテルで
見ていたとき、一人の女性の人生が見えてくるとともに、北朝鮮という国の姿
が実感として見えてきました。被爆者でありながら、核がないと自分の国が守
れないとして自国の核実験を肯定し、そういう国の指導者に対して心からの敬
愛の念を抱いていることなど、私たちには理解しがたいこともあります。です
が、そういうことも含めて北で暮らしている人たちの素直な気持ちを取材する
ことができたのではないかと思います。

hiropyong.jpg
J&Bの横壁にて。

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テーマ:インタビュー - ジャンル:映画

支配人はいますぐTwitterを始めよ(村上友梨さん&秋山莉奈さん)

今回は7月に上映した『ハンドメイドエンジェル』に出演している
お二人のインタビューです。
グラビアアイドル(一人は女子高生)ということで、これは興奮せざるを得ません。
もう映画とか映画館とか、どうでもよくなってしまいますね。では、どうぞ。

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第13回:村上友梨さん&秋山莉奈さん(『ハンドメイドエンジェル』)

映画『ハンドメイドエンジェル』公式サイト

上映情報はコチラへ↑

★ハンドメイドエンジェルにハンドメイド映画館について聞く
Q:今日はよろしくお願いします。

村上&秋山:よろしくお願いします!

Q:実際にお二人を眼の前にして緊張しております。
あまりにキレイなので…

村上&秋山:……(沈黙)

Q:…というわけで、「ハンドメイドエンジェル」ですが、
この作品は、女の子達が手作りでアダルトショップを作って
成功させるというストーリーですが、実はこの映画館も手作りで
やっておりまして、その点で共通する部分があります。
で、お二人にこの映画館を成功させるにはどうすればいいか、
お聞きしたいのですが……

村上&秋山:……(3秒沈黙)

Q:いや、なんでそんなことを聞いたかといいますと、実はあまり
お客さんが入ってなくて困っておりまして、どうすればお二人のような
若くて美しい女性に来てもらえるような映画館にできるかご意見を伺いたいなあ、なんて…

村上&秋山:……(5秒沈黙)

Q:……あ、すみません、ヘンなこと聞いてしまって……
ええっと、ところで、村上さんは今回初めて映画に出演されましたが、
他のお仕事と比べて映画はいかがでしたか?

村上:普段は雑誌ばかりなのですが、女優になるのが目標なのですごく
楽しかったです。最初は緊張していたのですが、スタッフの方がみんな
すごく優しくて、やりやすい現場で楽しかったです。

Q:監督さんとの関係はどうでしたか?

村上:すごい優しい方でした。面白くて、あっという間に終ってしまった
という感じでした。

Q:演技は初めてだったと思いますが、監督から指導を受けましたか?

村上:そうですね、わかりやすい指導をいただきました。

Q:秋山さんは、何度も映画に出られていると思いますが、今回の作品はいかがでしたか?

秋山:女の子達でショップを作るということで、女の子が多い現場でしたが、
私、女の子がすごく苦手で、団体行動とか得意なほうではないんですけど、
撮影期間が短かったのに、こんなに仲良くなれることもあるんだという
くらい、みんなと仲良くなれて楽しい現場でした。

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無理矢理、映写室で撮影会させていただきました。


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テーマ:インタビュー - ジャンル:映画

居場所が無かったら映画館に行けばいい(小野さやかさん)

とにかく体を張っている。全編に、張り詰めた緊張感、生々しさ、切実さが溢れ、
映画で描かなくてはならないという強い意志が漲っている。
ここまで体当たりで、イノチガケな映画は滅多にない。
師匠である原一男作品を彷彿とさせ、原監督自身も絶賛したドキュメンタリー映画
『アヒルの子』の監督・小野さやかさんに話を伺いました。

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第12回:小野さやかさん(『アヒルの子』監督)

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『アヒルの子』
←公式サイトへ
シネマ・ジャック&ベティにて上映中!
7/24(土)~7/30(金)19:55~21:35
※26(月)~30(金)は小野さやか監督来館予定


★どうせ死ぬなら、映画を撮って死にたい
Q:しかし、本当に最初から最後まで涙の量が半端じゃない映画ですね。撮影期間はどのくらいだったんでしょうか?

小野:2004年7月から12月までの半年くらいです。

Q:半年間泣きっぱなしだったわけですね。期間中、少しは笑ったりするときもあったんでしょうか? カメラが回ってないときとか。

小野:いや、本当に一切笑ったりしませんでした。スタッフと一緒に青春18きっぷで、12時間くらいかけて東京から愛媛まで行ったときも、ずっとしかめっ面で、異様な空気を作り続けていました。

Q:その状態を維持し続けるのは大変ではなかったですか?

小野:撮影当時は20歳で、家族の中にカメラを持ち込むという中で、家族の中でいい子であった私は、撮影を通して常に限界を超えるという緊迫状態でした。出演者でもありながら演出というポジションでもあったので、終わるまでは、私が気を抜いてしまってはいけないと思っていました。ここで諦めてしまっては答えが見つからないというか。作品が形になるまでは絶対にやり遂げなくてはいけないという気持ちでした。

Q:スタッフと一緒にいる時間と、プライベートの時間とで切り替えていたのでしょうか?

小野:
最初の1ヶ月は独白シーンの撮影で、部屋にカメラを固定して、家族に対する呪詛の言葉を吐き出すという撮影をしました。毎日思うことがあればカメラの前で話し、感情の殴り書きのようなものをスタッフに書いて渡しました。分量では160枚
くらいになるかと思います。撮影当初は、スタッフのことを誰一人信用することができず、映画を作るための必要最低限の人数でチームを結成しました。ただ、撮影の山内大堂はカメラセンスが抜群にうまかったので、彼の家まで行ってスタッフとして
入ってほしい、とくどきおとしました。山内には「風呂だろうとトイレだろうと、山内が必要と思えば(カメラを)まわせ。」と言い、スタッフと撮影でもめた時には「この作品が完成しなければお前ら全員殺す」と言っています。それ程、家族を傷つけてまで
映画を撮る責任を、スタッフにも同様に感じてほしいと思っていました。なので、撮影終了時まで気を抜く暇はなかったように思います。

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小野さやかさんと編集を担当した大澤一生さん。ジャック&ベティの応接室にて。

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テーマ:インタビュー - ジャンル:映画

映画は人の心を深く動かす(藤本幸久さん)

ドキュメンタリー映画「One Shot One Kill」は、
アメリカ海兵隊のブートキャンプでの、「普通の若者が戦場で
人を殺せるようになる」までの12週間の訓練に密着した作品です。
間違いなく現実に起こっていることを記録した映像でありながら、
悪い夢でも見ているような超現実的な映像の連続に圧倒されます。
今回はこの作品を監督した藤本幸久さんにお話を伺いました。

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第11回:藤本幸久さん(映画監督)

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『One Shot One Kill―兵士になるということ』
ジャック&ベティにて、6/27~7/9まで上映(終了)
今後の上映予定は、公式サイト


★普通の若者がなぜ人殺しになれるのか

Q:たいへん面白く拝見しました。面白いというと語弊があります
が…とにかくシュールで、非日常的で、自分も洗脳されてしまうの
ではないかと、観てて恐くなりました。

藤本:「面白い」と思ってもらっていいんです。この作品を通じて、
戦争に関係のない人でも、兵士になって、人殺しができるようになる
ということを描きました。アメリカだけでなく、日本にいる若者も、
自分もこの映画に出てくる若者たちと変わらないということを想像
しながら観てもらえればと思っています。
『ONE SHOT~』は、『アメリカ―戦争する国の人びと』というもう
一本の作品と同時期に撮影した兄弟のような作品です。
『ONE SHOT~』のほうでは、若者が兵士になるまでを描きましたが、
彼らが戦場に行ってどんな経験をしてきて、その後の人生にどう
つながっているのか、ということを長い時間をかけて描きたかったんです。
『ONE SHOT~』は作品としては完結していますが、入隊してから
もう2年くらい経っているので、彼らがいまどこでどんなことを
しているのか、ぜひ今後も追っていきたいですし、4年で除隊する人が
多いのでその後の彼らの人生がどうなっているのか、かつて希望を持って
入隊した彼らの夢はかなえられたのかどうかということが描ければ説得力の
あるものになるのではないかと考えています。
かつてベトナムでいろいろ経験した人たちと、新たに兵士になった人たちの
人生が重なっていくということまで撮ってみたいですね。

Q:『ONE SHOT~』の中でインタビューに答えている若者はどのように
選んだのですか?

藤本:僕たちがリクエストを出して、軍が選びました。条件として
マイノリティの兵士を取材したいと伝えたところ、彼らに決まりました。
おばあさんが日本人の日系三世の若者と、お母さんが日本人の日系二世
の子と、フィリピンから移民してきた若者の三人です。
おばあさんが日本人という子は、戦後日本に駐屯していた米軍との間に
できた子供がアメリカに渡ってできた子供でしょうし、お母さんが
日本人だった彼のお父さんは、海軍兵士だったのでおそらく横須賀に
いた人だと思います。
マイノリティとして、それぞれ背景にドラマを持った若者たちが、
軍に入ってどういう人生を送っていくのかというのは関心があります。
彼らを今後も引き続き撮影できたらと思っています。


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上映初日に来館した藤本監督。J&Bのロビーにて。

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