100年後の映画館のために

映画館元副支配人による映画と映画館をめぐるインタビューの記録

2017-08

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面白くなければ客は来ない(山谷哲夫さん)

今回ご登場いただくのは、映画監督でノンフィクション作家でもあ
る山谷哲夫さん。日本映画学校で長年先生もやられていた、ドキュ
メンタリー界の重鎮でもあります。

ぼくにとっては、山谷さんといえばなんといっても「じゃぱゆきさん」。
海外からの出稼ぎ外国人女性たちの人身売買の実態をルポした
ノンフィクションの傑作です。

お客さんとは何か、お客さんが求める「面白いもの」とはどのよう
なものなのか、ベストセラーを生み出し、映画界に長く関られてき
た山谷さんならではのお話を聞くことができました。


--------------------
第3回:山谷哲夫さん
(ドキュメンタリー映画監督、ノンフィクション作家)


★映画館に育てられた
Q:山谷さんと映画との出会いを教えてください。
山谷:母がずっと映画館のモギリやっててね。富山の「高岡劇場」
っていう小屋。その頃は映画全盛だったから儲かっていて、モギリ
とはいえ社員だった。父はぼくが物心ついたときにはもういなくて、
母の話では、父は元台湾総督府の警察官で、戦後、復員して失意の
中で死んだらしい。だから母が一人で、映画館で働いて、ぼくを育
ててくれた。80年代に「E.T」がヒットしてたのが、最後の記憶かな。

Q:映画館で育ったようなものなんですね。では、初めて映画作り
に関ったのはいつですか?
山谷:大学2年のとき、アルバイトで今村昌平の「神々の深き欲望」
に参加した。なんでもやる雑用係だったね。すごい現場だった。で
も大勢で作る映画は自分に向いてないと思って、ドキュメンタリー
をやることにした。

Q:ご自信の作品で、どの作品が一番思い入れがありますか?
山谷:4本目に作った「沖縄のハルモニ―証言・従軍慰安婦」('79)。
これが一番当った。あの頃はフィルムの一コマに自分の将来がある
と思って撮っていた。ハングリーだったね。あれを超える映画は作
れないと思う。

Q:テーマが「従軍慰安婦」というのも刺激的です。この作品はど
うしてヒットしたんでしょうか?
山谷:元慰安婦の前で、自分が美空ひばりの歌を歌うシーンがある。
「りんご~の~」って。歌詞も間違ってるし、すごい音痴。恥ずか
しいのでそのシーンをカットしようとしたら、編集者がこれは面白
いから入れたほうがいいと言うので残した。客はそのシーンで笑っ
ていた。自分を全部さらけ出してアホになったからよかったんだと
思う。アホにならないと客は喜んでくれない。

yamatani.jpg
撮影:坂本慎平
Q:その後、映画だけでなく文章のほうでも活躍されています。
「じゃぱゆきさん」('85年)は大ベストセラーになりました。これ
もテーマは売春ですね。
山谷:あれも自分がアホになったから売れたんだろうね。あのとき
は予算もあったから、大勢のスタッフを大久保や歌舞伎町の色んな
ところに潜りこませて膨大な情報を集めたんだ。テーマは誰もやら
ないことやろうと思っていた。やっぱりスケベなんだろうね。

Q:「じゃぱゆきさん」では、写真家の今枝弘一さんとも一緒に仕
事をされていますね。ぼくも大変お世話になった方なんですが、今
枝さんは山谷さんから見て、どんな人ですか?
山谷:彼はぼくが出会った天才の一人だと思う。現場でのインスピ
レーションがすごい。霊感のようなものがある。あの本では、今枝
君からたくさん学んだ。彼の写真集「ロシアンルーレット」のアフ
ガン帰還兵の写真など、あの頃の彼は本当に凄いよ。

Q:他にも天才と呼べる人はいますか?
山谷:一人は沢木耕太郎。特に「人の砂漠」は素晴らしい。あとは
原一男。「極私的エロス」。みんな、ここまでやるのかという衝撃
がある。でも、先生になっちゃうと面白くなくなっちゃうね。

★面白ければ客は来る
Q:ところで、最近は映画館にお客さんが来なくて困っています。
山谷:映画館に客が来ないのは、映画が面白くないから。面白かっ
たら客は来る。

Q:面白い映画というのは、例えばどんな映画でしょうか?
山谷:例えば黒澤明の映画。黒澤作品は客の方を向いて作っている。
面白いでしょ?

Q:はい、「七人の侍」とか「用心棒」とか…すごい映画だと思い
ます。
山谷:あれが映画だよ。最近ではテレビの「竜馬伝」が面白い。映
像、演出、小道具…すべて素晴らしい。映画は組織で作られるもの。
職人たちが技を結集して作っている。黒澤のもそうでしょ?

Q:そうですね。面白い作品は、関っている人全員が力を発揮して
作られているわけですね。
山谷:そう。「竜馬伝」を超えるくらいのものじゃないと、わざわ
ざ映画館に行って金払わないよ。

Q:映画は娯楽であるとともに、芸術でもあるわけですが、その辺
はどうバランスを考えればいいのでしょうか?
山谷:芸術性がどうのとか言っている映画にはぼくは興味がない。
それで「客は来るの?」と言いたい。客が来ない映画を作ってどう
するの?ぼくはずっとそう考えてきた。

Q:ジャック&ベティでも、映画好きの人たちを想定して、あまり
一般的でないマニアックで芸術性の高い作品を選んで上映したりし
ていますが、いまいちお客さんは入っていません。
山谷:当たり前だよ。そんなもの客は求めてないんだから。それに、
2番館だからって、東京でやったものをわざわざ遅れてやる必要な
んてないんだ。

★人は、女と金と殺人を求めている
Q:ところで、ジャック&ベティでは大島渚特集をやっていました
が、これはどうですか?
山谷:大島なんて客来ないでしょ。観たい人なんているの?

Q:…大島特集が入ったかどうかは、後日支配人に聞いてみます。
では、お客さんはどんなものを求めているんでしょうか?
山谷:女、金、殺人。客は怖いもの見たさで観に来る。以前、文芸
坐で特集を組んだことがある。そのときは全共闘、山谷、エロ、従
軍慰安婦をテーマに上映した。これはかなり当った。

Q:それはかなり刺激的なプログラムですね。
山谷:「客とは何か」という本質をとことん考えなければダメ。映
画監督も、映画館側も、客に幻想を持っているんじゃないか。カッ
コいいもの、芸術的で高尚なモノなんか求めていない。客は実際は
もっとしたたかで、エロくて、金にシビア。面白くないものに金は
払わない。

Q:なるほど、自分はよく考えていたつもりだったんですが、幻想
しか見えてなかったんだと思います。
山谷:客が誰かということがまったく見えてない。美空ひばり特集
は入ったでしょ?ああいうことだよ。

Q:最後に、今後のことを教えてください。
山谷:『B級自由民』(宝島新書)は失敗した。あれは「えぇかっこ
しい」だった。それじゃダメ。やっぱりアホにならないとね。いま
面白い企画があるんだけど、それは内緒。

Q:すごく楽しみです。今日はありがとうございました。


インタビュアー:浅井理央、坂本慎平



<プロフィール>
山谷哲夫(やまたにてつお)
ドキュメンタリー映画監督、ノンフィクション作家。
1947年、富山県高岡市生まれ。72年早稲田大学第一文学部卒
業。74年英国映画協会へ留学、映画を学ぶ。主要監督作品『生き
る―沖縄渡嘉敷島集団自決から二十五年』('71)、『沖縄のハルモニ』('79)
『バンコク観光売春―買われる側の生活とその意見』('82)、プロデ
ュース作『妻はフィリピーナ』('94)、『ファザーレス』('99)、著書
に『沖縄のハルモニ~大日本売春史』、『じゃぱゆきさん』など。


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