100年後の映画館のために

映画館元副支配人による映画と映画館をめぐるインタビューの記録

2017-10

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幸福で平和だったら、映画は撮らない(若松孝二監督)

主演・寺島しのぶさんが、ベルリン国際映画祭で最優秀女優賞を
受賞したことも話題を呼び、現在、全国のミニシアターで驚異的な
大ヒットとなっている若松孝二監督の新作「キャタピラー」。
第二次世界大戦で四肢を失って帰還した夫とその妻の生々しい日常を
通じて、戦争がもたらす悲劇と本質をえぐり出した反戦映画です。
この夏、最大の話題作を是非お見逃し無く。

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第15回:若松孝二さん(映画監督)


tirashicatarpillaa.gif
「キャタピラー」
横浜シネマ・ジャック&ベティにて絶賛上映中!!

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★戦争はゲームではない

Q:前作「実録・連合赤軍 あさま山荘への道程」でも大変お世話になりました。
また超話題作を上映させていただき感謝しております。作品が必ず話題を呼び、
お客さんを動員する作品を作り続けているということは本当に凄いことです。こ
れまで監督は常にその時代のテーマを取り上げ、その時代と向き合う作品を作っ
てこられましたが、前作と今回では過去の時代を総括する作品を作りました。こ
れはどういう意図があるのでしょうか?

若松:学校の教科書で教えないことを、映画と言う武器を使って皆さんに観ても
らおうということです。今回の「キャタピラー」では、戦争はぜんぜん関係のな
い人を殺すものです。もしかしたら自分も殺されるかもしれない、戦争はゲーム
じゃないんですよということを言いたいのです。戦争とは何か、原爆とは何か、
沖縄で何があったのかということを一人ひとりがもう少し考えてみるきっかけに
してほしいのです。
 やっぱりね、自分が観たいとも思わないものを作るから客が来ないんですよ。
お金とって見せるわけですから、僕は常に自分が絶対的に観たいと思い、かつお
客さんも観たいだろうという意識で作ってるからね。会社から頼まれたからとか、
漫画の原作でやろうとか、イケメン使えば若い子が来るんじゃないかとか、それ
で映画作って結局客が入らないって嘆いている。面白くないから入らないんです。
誰が観ても面白いと思える映画を作らなきゃダメなんです。客が入る映画は黙っ
ていても入ります。

Q:監督は「連合赤軍」や「戦争」といった、多くの人に訴えかけるテーマを題
材に映画を作りましたが、これらのテーマは人によっては直視できないようなそ
ういう歴史でもあるわけです。そのような重みのあるテーマを扱うのは、監督に
とってもやはり大変なことだったのでしょうか?

若松:ものすごく大変なことですよ。犬の映画や、ガンで恋人が死ぬとかそう
いう映画でも作れればどれだけ楽かと思います。でも僕がそんなもの作っても誰
も観に来ないでしょう? 次は何を撮るんだろうと期待されている面もあるから、
変なものは撮れません。みんなが観たいと思うものは何かということを意識して
脚本作りをやっていますね。


caterpillar01.jpg
大西信満さんと若松孝二監督

★戦争体験から生まれたリアリティ

Q:監督にとって「戦争」の実体験は、どのようなものだったのでしょうか?

若松:終戦が小学校3年でした。夜、空襲で焼夷弾が落ちてくる光景が、線香花
火がパラパラ落ちてくるみたいできれいなんです。空が真っ赤になるんですよ。
夕方の空みたいに。あと、いつでもカボチャかサツマイモばかり食べていた、そ
んな記憶しかないんです。白いご飯なんか絶対食べられません。国に全部持って
いかれたからね。だから、白い飯が食えるからって兵隊に行った人もいたんだよ。

Q:映画の中でも食べ物の描写が多くでてきます。特にシゲ子が卵を久蔵に押し
付けるシーンは迫力がありました。

若松:卵は当時、物凄く貴重だったんです。それをこの「軍神様」にあげなけれ
ばならない。あの時のシゲ子の気持ちは、こんな貴重なものをこんな夫にあげな
ければならないっていうことに対して、もう我慢ができなかったんでしょうね。

Q:村の風景がものすごくのどかで開放的な感じがするのに対し、家の中の薄暗
くて重苦しい雰囲気が対照的ですね。

若松:農家はどこもあんな感じで、山があり田んぼがあって鳥が鳴いてのどかな
ものでした。たまにB-29が飛んできてね。もちろん家には電気は通っていませ
ん。小さい頃、ランプのガラスをよく磨かされましたよ。それが子供の仕事でし
たからね。

Q:手足のない久蔵が、軍服を着て勲章を付けて天皇のご真影と武功をたたえた
新聞記事とともに写るシーンが印象的でした。

若松:久蔵にとっては、新聞記事や勲章を見ることが唯一の慰めなんです。そう
することでしか自分が生きているということを確認できない。軍神として祭り上
げられてはいますが、食って、寝て、エッチしてそれだけしかないわけですから。
誰でも新聞に載れば嬉しいものでしょう。僕も初めて新聞に載ったときは嬉しか
ったですよ。監督として認められたと思って。でも、僕は勲章はもらいません。
国は勲章で人を騙しているんですよ。勲章ほど人をダメにするものはないと思っ
ています。ちゃんとした人はきちんと断ってますよ。黒澤明だって杉村春子だっ
てもらってないでしょう? 森繁久彌だって死んでからです。戦争の場合、一人
でも多く人を殺した人が勲章をもらって階級が上にあがれるんです。「一人殺す
と殺人者で、百万人殺すと英雄」というチャップリンの言葉があるでしょう。戦
争というのはそういうものなんです。

Q:戦後65年経ちますが、いまだに日本はアジアに対して謝罪をし続けていま
す。そういう国に対するもどかしさや怒りが今回の作品を作った根本にあるので
しょうか?

若松:もちろん、そういう面はあります。例えば北朝鮮に対しては何の保障もし
ていません。北朝鮮はB級戦犯・慰安婦・被爆者の問題を解決してくれれば、日
本と仲良くなりたいと言っているんです。「連合赤軍」をよど号ハイジャックの連
中に見せに北朝鮮に行ったとき、北朝鮮の政府の偉い人がそう言っていました。
北朝鮮のことに限らず、沖縄の問題など、解決しなければいけないことがまだま
だあるわけです。

caterpillar02.jpg
「実録・連合赤軍」リバイバル上映での舞台挨拶の様子


★映画館が無くなれば、作り手もいなくなる
Q:面白い作品を作らないとお客さんが入らないという話がありましたが、ヒッ
ト作・話題作を作る秘訣のようなものはあるのでしょうか?

若松:面白いというか、「興味を持ってもらえる」作品ということですね。秘訣は
ね、「腹が立っている」ということですよ。腹が立たないと映画なんて撮れない。
もっと幸せで平和な世界だったら、映画なんて必要ない。僕はレバノンやパレス
チナで虐殺の現場、何百人もの死体の山を見てきました。何でも見てやろうと思
っているんです。そこが普通の監督とは違うのかもしれない。そういう現状を作
り出している権力に対して腹が立っているということが原動力になっています。

Q:監督は名古屋のミニシアター「シネマスコーレ」のオーナーでもいらっしゃ
いますが、最近のミニシアターの状況についてはどのようにお考えですか?

若松:(客が)入らないものばかりやってるからダメなんだよ。入るものはメジャ
ー館が持っていって、ミニシアターにはカスのようなものしか残らない。数人しか
入らない映画を一日のうちに何本も上映しているようだと客も来なくなります
よ。ある劇場では「キャタピラー」を平気で三本立てにしちゃっていて、お前な
めてんのかと言ってやったけど。

Q:J&Bは「キャタピラー」の大入りを期待して、一日5回上映で組んでいま
す。

若松:
この作品は間違いなく入りますから。いい映画をやり続ければ、お客さん
は確実についていきます。(※実際、『キャタピラー』は連日超満員となっている)

Q: 「キャタピラー」のような作品がどんどん出てくれば劇場としても嬉しい限
りですが、現実はそうはいきません。ところで、映画館はこれから先も変わらず
に存在し続けていくものとお考えでしょうか?

若松:僕は前から文化庁に言っているんですが、映画作るのには金を出さずに、
映画館に金を出して、いい映画をかける映画館、若い作家の映画をかけてくれる
映画館を援助しないとダメだ言っているんです。ずーっと監督協会にも言ってい
るんだけど動こうとしない。だから僕は監督協会を辞めたんです。フランスでも
イギリスでも映画館を保護しています。もちろん作り手も支援していますが、日
本ではどうしようもない映画にお金を使っているでしょう。(国からの助成は)も
ちろん、もらえるものならもらいたいですよ。その代わり、国の嫌がることばか
り撮るけどね。国はそれをちゃんとわかってるのか、『連合赤軍』は、「該当しか
ねます」の一言で却下された。若松には金を出さないって決まりでもあるんだろ
うか。作り手はともかく、映画館を保護しないと、いずれ作り手はいなくなりま
すよ。あと映倫の料金だって、(フィルムを)200本作るメジャー作品と数本しか
作らない若手が作った作品と、料金が同じってことはないでしょう。

Q:国が映画という産業にどのようにお金を使うかという点については、いろい
ろ考えなければならない問題だと思いました。最後になりますが、監督の本で読
んだ言葉で「どんな辺境からでも出撃する準備を」という言葉がとても印象に残
りました。こういう場末の映画館にいると、まさにそういう気持ちで準備してい
ないとダメだと思っています。

若松:助監督にもよく言ってるんだけど、人間には必ずチャンスがあるから、そ
の瞬間が来た時にチャンスを捕まえるスタンバイをしておけよと、だから勉強し
なさいよと言っています。勉強といっても、映画を観たり小説を読むことだけで
はなく、どういう映画を撮って誰に見せるのか、僕のやり方をちゃんと見ておき
なさいと言っているんです。

Q:今日はどうもありがとうございました。

2010年8月8日(日) ジャック&ベティ応接室にて

<プロフィール>
若松孝二(わかまつ こうじ)
1936年生まれ。1963年、『甘い罠』で映画監督としてデビュー。『胎児が密猟す
る時』(66)、『天使の恍惚』(72)、『水のないプール』(82)、『実録・連合赤軍』(07)
など、現在に至るまで第一線で活躍しつづける巨匠。


『キャタピラー』公式サイト 

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戦争を行なった世代の子供世代が起した60年代の革命運動を描いた傑作。
「若者たちが国家に抵抗したのは、戦争のことを忘れて経済発展を目指した
親世代への怒り。今度はその親世代のことを撮ろうと思った」(若松監督)。


若松孝二全発言若松孝二全発言
(2010/07/13)
若松 孝二

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60年代から「キャタピラー」に至るまでの若松監督のコラムや発言を集めたアンソロジー。「腹立ちは映画づくりのエネルギーになる」「ピンク映画からの出撃―どんな辺境からでも出撃する準備を」など、数々の刺激的な文章から若松監督の思想の全貌が明らかになる。
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テーマ:インタビュー - ジャンル:映画

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