100年後の映画館のために

映画館元副支配人による映画と映画館をめぐるインタビューの記録

2017-08

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もっと喧嘩しろ!(大宮浩一さん)

ドキュメンタリー映画『ただいま それぞれの居場所』
今、静かな話題をよんでいます。

本作品には、画一的な介護サービスの在り方にジレンマを感じ、
自ら理想とする介護を実現させようと施設・事業所を
立ち上げた若い人たちの奮闘ぶりと、誰もが他人事ではいられない
介護の「今」が描かれています。

ジャック&ベティでの公開初日に来館した監督の大宮浩一さんに、
この作品のことではなく(劇場で実際にご覧ください!)、
映画や映画館についてあれこれ伺いました。

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第9回:大宮浩一さん(映画監督・プロデューサー)

tirashitadaimaa.jpeg
『ただいま それぞれの居場所』
シネマ・ジャック&ベティにて絶賛上映中!
<6/12(土)~6/18(金)> 10:45~12:30
<6/19(土)~6/25(金)> 12:10~13:50



★映画の可能性に魅せられて
Q:映画の仕事に進んだきっかけを教えてください。
大宮:大学で映像学科に入りました。そういう学部を選んだという
ことは高校のときから映画をやろうと決めていたんだと思います。
でも大学にはほとんど行ってなくて、いちおう2年間籍はありまし
たが、実質除籍でした。「あなたの退学届けは受理しました」って
言われて、俺書いてないしって感じで(笑) 俺がいなければ日本
映画は遅れるのになと思いながらも、誰にも引き止められなかった
ので田舎に帰って税理士の勉強を始めました。そのときに原一男さん
が映画を撮るという話があったので、ギャラは出ないという条件だった
んですが、そんなわけ無いだろうと思って一年間限定で参加しました。
でも、本当にギャラが出なかった(笑) 
で、まあ撮影は1年ちょっとで終ったんですが、おかげで借金もできたので、
映画の借金は映画で返そうと思って、税理士は断念してこの世界に入り
ました。それでテレビの仕事など、映像の現場でお金を稼ぐための
仕事を始めました。当時は、そういう仕事を「まちば」とか言ってましたが、
今はもう言わないですかね。

Q:「街場」ですか? 初めて聞きました。ところで、子供の頃から
映画をよく観てて映画を作りたいと思ったのですか?
大宮:映画ではなく、政治のプロパガンダの一つの手段としての映像
に興味を持ちました。早稲田の探検部に入って、ゆくゆくは
「すばらしい世界旅行」みたいなものを撮りたいというような思いは
ありましたが、大人数でクレーン使ってという劇映画にはまったく興味
がありませんでした。山田洋次の家にはプールがあるらしいぜ、嫌な奴だな、
とか言っている嫌な青年でした。

Q:たいてい、監督くらいの年代の方ですと、お父さんに映画館に
連れていってもらって映画の魅力に目覚めた、というような原体験が
あることが多いんですが、そういうことはありませんでしたか?
大宮:まったくありませんでした。きっかけは政治に対する関心で
す。僕が大学入った年に成田空港が開港したんですが、一年間大学
にいかずほとんど三里塚に行っていました。小川紳介さんとか
土本典昭さんの活動を知って、映画という手段で社会の悪を糾すという
方法もあるということに興味を持ちました。活動に参加している自分たち
自身を撮って、それを世に伝えるということが新鮮だったんです。

tadaima01.jpg
上映初日舞台挨拶する大宮監督


★ますます不動産屋化する映画館
Q:現在、映画館は厳しい状況が慢性化していますが、この状況に
ついてどうお考えでしょうか?
大宮:今回は監督ですが、普段はプロデューサーをやっています。
プロデューサーの立場から言えば、映画は儲けなければいけない。
いまは儲けなくてもいいんだという一発屋があまりにも多い。若い
人に作らせて、小屋でかけて、結局回収できない。才能があったか
もしれないけれど、次回作が作れないという悪循環が生まれていま
す。それでも、映画学校に若者は次から次へと消耗品のようにやっ
てきます。その繰り返しです。今回、小屋でかける映画としては
10年ぶりなんですが、その間に映画館はますます場所貸しの不動
産屋みたいになっています。その原因は、作り手、配給、小屋がお
互いに文句を言わなくなったことにあると思います。山本政志は配
給とか小屋とかバカとは付き合わないといって、自分で配給し小屋
も作ってしまう。これは純粋な考え方です。それを分業にしすぎた
ために、いい意味での喧嘩ができなくなっているのが現状です。
とうてい100年なんか持ちませんよ。

Q:10年前と状況は変わってませんか?
大宮:むしろ悪くなっているだけで、よくなったことは何もありま
せん。「ゆきゆきて、神軍」はユーロスペースが配給・宣伝し、
この映画を育てるんだという、小屋の気概が感じられました。
小屋はリスクを負うけれど、その代わり半端じゃなく儲けるぞという、
強い気持ちがあった。そうでないと原一男は映画が作れないからです。
いまはそういう作品と小屋の関係は成り立たず、次回作を作れない
人が後を絶ちません。それでも小屋と配給が儲かっているならまだ
救いはありますが、どちらも儲かってないわけで、もう末期的な状況です。

Q:その原さんも今はなかなか作れないようです。資金的な面だけ
でなく内容的にも、昭和から平成に変わって、映画で描くべき問題
が見えにくくなってきていると言っていて、若い世代の作る作品は
内向きでひ弱な作品が多いと嘆いてらっしゃいました。
大宮:それは原さんの責任もあるんじゃないかな。そういう作り手
を作っているのは原さんだし。それは時代とかの責任ではなく、
時代を見る目をどう育てるかという問題でしょう。まだまだ映画で表現
すべき問題はたくさんあります。誰も他人の生い立ちとかそんな
ことは聞きたくないわけで、飲み屋で聞いても酒がまずくなる。
そんな程度のものを映画館で観ないほうが健全なわけです。

★リスクを負わなければ自由になれない
Q:今回の作品「ただいま それぞれの居場所」は、多くの人が関
心のある老後や福祉がテーマになっています。多くの人に観てもら
おうという考えからこのテーマで撮ったのでしょうか?
大宮:そういうことはまったく考えてません。自主制作ですから、
そもそも小屋にかかるなんて決まってないですし、完成しないかも
しれない。でも、自主だから自分がリスクをすべて負っていて、だ
からこそ自由になれるんです。ところで、いまここ(部屋の壁)に
「全身小説家」のポスターが貼ってありますが、ユーロスペースの
名前がありますね。ユーロは一般的には劇場ですが、配給もやって
ます。これって自由ですよね。

Q:劇場がリスクを負わないから自由になれないというわけですか?
大宮:「ザ・コーヴ」の問題もそうです。政治的な圧力から表現の
自由を守れみたいな集会やっていますが、一体何を言っているのか
と思います。小屋は、儲けるからやるんであって、儲からないと思う
のであればこんなクソ映画は上映しない、と配給に言っていいんです。
でも上映するって言っているのにしないのは、そこに主体性がない。
これは政治的な問題でも何でもなく、映画館の主体性の問題なんです。
やると決めたのにやらないのなら、そのディレクターは責任とって
辞めるべきでしょう。あの亀井静香だってそのくらいの気持ちは
持っていたわけですから。

Q:
梶原さんは、そうなったら責任取れますか?
梶原支配人:…おっしゃることはよくわかります。
大宮:小屋を一方的に責めているわけじゃないんです。配給と小屋
が喧嘩すべきでしょうし、喧嘩して決めたことならそう簡単に揺る
がないと思うんです。配給から、これ東京でちょっと入ったからどうか?
と話が来て、小屋側もその成績見てなんとなく決めるみたいな、
そういう関係を少しでも変えていかなければいけないと思います。
もちろん作り手も、ちゃんとした作品を作らなければいけません。
作り手、批評家、配給、小屋のどこかが、本気で喧嘩を吹っかけていく、
つまり意見を言い合うようなことがないと、映画業界は間違いなく
滅びます。いまは、映画というものは「無くてはならないもの」
ではなくなりました。映画が無きゃ生きていけないという人はほぼ
いないでしょう。すでに末期的な状況なわけで、この先このミニマム
な状態をいかに延命するかということなんじゃないでしょうか。

★三者会談を開いて喧嘩しろ!
Q:ミニマムを維持するためにも、関係性を変える努力をしなけれ
ばいけないということですね。
大宮:例えば、今回の上映の前に、小屋、配給、作り手の3者は会
っていません。会わないのが普通になってしまっているんですね。
でも本当は、上映を成功させるためには、1ヶ月前から会って、
宣伝費はいくらで、チラシは何枚あって、それをどこに届けるのか、
横浜ならではの戦略は何か、ということについて話し合うべきなん
です。この10年間、こういうしなくても済んでしまうことは何一つ
してこなかったわけで、そんなんで客が入るわけがない。
Q:そうですね、丁寧に一本一本宣伝していくということをやって
いかなければいけませんね。ドキュメンタリーは問題がはっきりし
ていますから宣伝はやりやすいですし。
梶原:監督さん自身が動いているような作品では一緒に動くことは
あるんですが、配給さんがいらっしゃると甘えてしまってそのまま
になってしまうということがあります。
大宮:実際そんなに配給は動いてないから遠慮しないで大丈夫だよ。
ぜひ「ビルマVJ」(「ただいま~」の配給協力である「東風」
の配給作品)からやってください。

Q:最後に、いまこの時代に劇場で映画を観る意味はあると思いますか?
大宮:あります。小屋は映画を集中して観ることができる唯一の場
所です。作品への理解や感情移入、感動の度合いが(パソコンや
DVDで観るのと比べて)まったく違うと思います。作り手にとって
は小屋でかけてもらえるというのはまだまだステータスです。
若い人にとっても目指すべき場所なんです。映画館というのはステ
ータスなんだという誇りを持って、小屋はもちろん、配給も、作り手も、
いい関係を作っていかなければいけません。

Q:今日はありがとうございました。

2010年6月12日(土) ジャック&ベティ応接室にて

tadaima02.jpg


<プロフィール>
大宮 浩一(Koichi Omiya)企画・製作・監督
1958年生まれ。日本大学芸術学部映画学科在学中より、映像制作に参加。『ゆきゆきて、神軍』(87)、『アラカルト・カンパニー』(87)等で助監督を務める。フリーの演出家として民族博物館等の展示映像をはじめ、CM・VP・教育映画などを制作。93年、(有)大宮映像製作所を設立。主な企画・プロデュース作品に、『よいお年を』(96)、『JUNK FOOD』(98)、『DOGS』(99)、『青葉のころよいお年を2』(99)『踊る男 大蔵村』(99)等。



『ただいま それぞれの居場所』HP


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