100年後の映画館のために

映画館元副支配人による映画と映画館をめぐるインタビューの記録

2017-08

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誰かが手を抜けば、映画は滅びる(石井裕也さん)

現在、日本で(というよりむしろ世界で)もっとも期待されている
若手監督の一人である、石井裕也監督。
現在、初めての商業映画デビュー作となる『川の底からこんにちは』
全国で絶賛上映中です。さらにはもう1本の新作『君と歩こう』
ほぼ同時ロードショー中ということで、若い監督でこんなにガンガン
映画撮れてる人は、石井監督とほんの数名だけではないでしょうか。
それだけ世の中が石井監督の作品を観たいと思っているということでしょう。
そんな若手のホープ・石井監督に、少しだけお話を伺いました。

-------------------------


第7回:石井裕也さん(映画監督)

tirashikawasoko1.jpeg
『川の底からこんにちは』
シネマ・ジャック&ベティで絶賛上映中!
<5/22(土)~5/28(金)> 16:50~18:50
※『君と歩こう』も近日上映予定



Q:監督には以前、『ガール・スパークス』では大変お世話になり
ました。あのときは満員でしたし、今回の「川の底からこんにちは」
も大盛況ですね。
石井裕也監督:「ガール・スパークス」のときは地道に手売りをしま
したからね。もちろん嬉しかったですが、知り合いに観てもらうため
だけに映画を作ってるわけじゃないんで、そういう意味では不本意
でした。あのときは劇場公開が初めてだったので、どういうものな
のかということすら分からなかったんです。こういう映画だからこ
ういう人に観てもらいたいという自分のイメージと、実際の現実と
の間に大きなギャップがありました。「川の底から~」も、まだ始
まったばかりですが、満足はしていません。

Q:今回の「川の底からこんにちは」は初めての商業映画というこ
とですが、これまでとの違いはありましたか。
石井:違う部分と変わらない部分がありました。これまでは自主映画
という形でやってきましたが、いいものを作ってお客さんに楽しんで
もらいたいという姿勢は変わりません。一方で責任感が増えたのが
自主とは違う部分です。自主の時は、ダメだったらそれでもいいじゃ
ないか、という「滅びの美学」みたいなものがあったんですが、商業
映画ではそういう意識ではできません。守りに入るわけではないんで
すが、むしろこれまでとは違うかたちで攻めていかなければいけない
と思いました。

yuya_ishii.jpg
小林副支配人の席に座る石井監督
Q:『君と歩こう』も拝見したんですが、監督のユーモアは独特な
ものがありますね。
石井:落語に影響を受けた部分が大きいと思います。落語は、社会
的に恵まれてないけれど、マジメで誠実な人たちが出てきて、その
二人のやり取りから笑いや哀しみが生まれ、そこから人生の機微が
感じ取れる、という仕組みです。落語というのは言ってしまえば人生
そのものなわけです。日常の人間関係のちょっとしたズレだったり、
一生懸命生きている人の中から生じる滑稽さだったり、そういう
些細なことを拡大して見せてくれます。こういう落語のスタイルか
らかなり影響を受けていますし、作品を作るうえで「日常」を大事
にしたいと思っています。通常、その影響を露骨に出すことはしま
せんが、『君と歩こう』は、特に「落語」を意識して作った作品です。

Q:海外で高い評価を得てアジアでもっとも期待される若手に贈ら
れるエドワード・ヤン賞」">「エドワード・ヤン賞」を受賞しました。海外と日本での評価
の違いみたいなものを感じますか?
石井:日本ではなく、最初に海外でそういった評価を受けたことは
重要な意味を持っていると思います。海外の人は、どれだけの予算
で作られたものか、有名な俳優が出ているかどうか、ということに
はあまり拘りません。日本での評価基準とはだいぶ違うような気が
しています。

Q:いま映像文化を取り巻く状況が大きく変わりつつあります。
映画館で映画を上映することについて、どうお考えですか?
石井:このままの流れでいけば、遅かれ早かれ映画は滅びると思い
ます。とはいえ、立場上言えないこともありますが…(笑)
映画の世界は、映画を作る人、それを宣伝する人、作品を評価する
人、上映する映画館、そしてお客さんという風に、循環する円でつ
ながっていると僕は考えています。互いに作用し合っている関係、
ということです。
だから、その中の誰かが手を抜いたり甘えたりすると、円がどんどん
小さくなったり歪んだりすると思うんです。例えば、作り手がこの
表現は分かりにくいからもうちょっと分かり易くしよう、と言った
時点で、それは宣伝や評論や観客にも影響を及ぼすわけですから、
良くも悪くも「円」の形は変わってくると思うんです。もしかしたら、
その円の力が弱くなっていくかもしれません。また、例えばウェブ等
で映画を紹介する人が、アクセス数を増やしたいからという理由で、
「●●さんがミニスカートを穿いて舞台挨拶に登場」なんていう
見出しの記事を書くとします。もちろん「アクセス数を上げる」と
いう彼らなりの善意でやっていることなんでしょうが、女優が舞台
挨拶のときにミニスカートを穿いているかどうかなんて映画の本質
とは全く関係がないし、そんな文章を読んで、面白そうだ、この映画
を観にいこうと思う人がたくさんいるとは正直思えません。多分、
呆れるだけです。少なくとも僕の場合はそうです。
映画館も、本当はやりたくないけど、番組を埋めなくちゃいけない
のでしょうがなくやるとか。宣伝も同じです。「仕事」のためだけ
にやるとか。そういう映画でも、お客さんはスケジュールを調整し
て、忙しい中、映画館まで足を運んで1800円を出して観ますか
らね。もちろん全部が全部そうではないですが、そういう部分も少
なからずあるわけで、お客さんがだんだん映画館に足を運ばなくな
るのは、ある意味では必然だと言えると思います。そこには思想と
か哲学とか理想などはなく、お金の論理だけしかありません。
こんな風に、映画に関係する人たちはそれぞれ作用し合って「円」
を描いているわけで、その円が歪んだり、小さくなったりしている
のが今の状況だと思います。
どこかで誰かが、これは間違っている、と言わないといけない。
そうしなければ、映画はどんどん縮小していくでしょうし、その
価値を失っていくと思います。

Q:いま映画業界では、3D映画を売りにして、映画の娯楽として
の価値を高めようと躍起になっています。このような時代の中で、
映画館が生き残っていくために必要なことは何でしょうか。
石井:映画館はそれに乗じて設備を導入していくでしょうが、本当
に3Dをいいと思ってやっているのか、ただ時代の流れに乗ってな
んとなく導入しているだけなのか、そこのところは大きいと思いま
す。映画館は厳しい状況だとおっしゃっていましたが、これからの
時代に生き残っていくには、そういった時代の流れに振り回される
のではなく、独自の哲学や理想を持つことが大切なのではないでしょうか。

2010年5月15日 ジャック&ベティ事務所にて


yuya_ishii02.jpg
ジャック&ベティでの公開初日。ほぼ満員の観客を前にしての舞台挨拶の様子。


<プロフィール>
石井裕也(いしい ゆうや)
[映画監督] 1983年生まれ 埼玉県浦和市出身

大阪芸術大学の卒業制作として自身初の長編映画『剥き出しにっぽん』
を監督。この作品が第29回ぴあフィルムフェスティバルでグランプリ&
音楽賞 (TOKYO FM賞)を受賞。さらに同作品は第26回バンクーバー
国際映画祭コンペティション部門をはじめとする多くの海外映画祭
で上映された。
また、2006年から2007年にかけて驚異的なスピードで長編映画
『反逆次郎の恋』、『ガール・スパークス』、『ばけもの模様』
を制作、完成させた。
そして、それら4本全ての長編映画が第37回ロッテルダム国際映画
祭で特集上映されるなど、前代未聞の新人監督が出現したとして
世界的なムーブメントに発展。さらに、アジア・フィルム・アワードでは、
第1回「エドワード・ヤン記念」アジア新人監督大賞を受賞し、
第32回香港国際映画祭ではまたもや4本全ての長編映画が特集上映
された。

その後、2009年には『君と歩こう』、『川の底からこんにちは』
と立て続けに長編映画を発表。また、それに並行して短編映画も
多数制作している。



「川の底からこんにちは」公式サイト

Ishii Yuya Film Maker Page
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テーマ:インタビュー - ジャンル:映画

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