100年後の映画館のために

映画館元副支配人による映画と映画館をめぐるインタビューの記録

2017-10

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映画は上映されなダメなんや(亀井岳さん)

ご無沙汰しております。久々の更新です。
4月は舞台挨拶が少なかったのですが、今月はなんとほぼ毎週あります。
出来る限り取材しようと思っていますので、どうぞご期待ください☆
できれば皆さんもぜひ横浜のミニシアター「シネマ・ジャック&ベティ」まで足をお運びください。

さて、今月最初の登場は、9日(土)から公開となった
「チャンドマニ~モンゴルホーミーの源流へ」を監督された亀井岳さんです。
亀井さんは元々彫刻をやっていて、映画は今回が初挑戦。
モンゴルの旅や撮影のエピソード、そして映画/映画館のことについて関西弁で
ユーモラスに語ってくださいました。

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第6回:亀井岳さん(映画監督)

tirashichandomand.jpeg
「チャンドマニ~モンゴル・ホーミーの源流へ」
シネマ・ジャック&ベティで絶賛上映中!
<5/8(土)~5/21(金)> 13:00 / 19:10~20:50


★ホーミーが生まれた場所へ
Q:この作品の制作のきっかけを教えてください。
亀井:2005年頃、馴染みのおすし屋さんでモンゴル人の留学生と知
りあったんです。彼から2006年がモンゴル建国800周年で大きなお祭
りがあると聞いて、行ってみようと思ったのが始まりです。
ホーミーとの出会いはウランバートルに着いて初日でした。劇場で
たまたまホーミーを聞いて、強烈なインパクトを受けたんです。物
凄い抽象性を感じたというか、あらゆる具象的なイメージの窓口に
なっているというか、とにかく不思議な音が体に染み渡っていきま
した。それでホーミーが生まれた場所に行ってみたら何を感じるだ
ろうかと興味を持って、発祥地であるチャンドマニ村まで行ってみ
ることにしました。この映画と同じ、バスで1500キロ、二日間かか
りました。


Q:なるほど、この作品は監督の旅の体験が下敷きになっているの
ですね。その旅のときに映画にしようと思ったんですか?
亀井:旅の途中、モンゴル人たちと触れ合っていくうちに、モンゴ
ル人って何だろう、遊牧して生きるってのはどういうことなんだろ
うといろいろ考えるようになったんです。とりわけモンゴル人の自
然との関わり方が潔くて清潔で、素敵だなと思うようになりました。
ああ、こういう人たちと自然からホーミーは生まれてきたのかと。
チャンドマニ村に着いて、ダワージャブという名人がいるというこ
とを知ってゲルを訪ねていったんですが、残念ながら不在で会えま
せんでした。でも息子のザヤーのことを教えてもらい、翌年連絡し
て会うことになります。その晩、ゲルに泊めてもらい、朝起きてモ
ンゴルの大地に立ったとき、この旅の体験を元に映画を作ってみた
いなと思ったんです。


Q:今回が初めての作品ですが、制作は順調に進んだんですか?
亀井:ストーリーや音楽を考えたり、演出も必要だし、物凄く大変
そうだと思いました。でも、ずっと映画のことを考え続けていたら
だんだん映画脳になっていって、ラストシーンを決めてしまった後
は、映画全体を頭の中で組み立てていけるようになりました。
最初、すべてを一人でやろうと思っていたんですが、2007年にキュ
ーバに行った時、古木君と出会い、彼だったら一緒にやってもいい
んじゃないかと思って声をかけました。
とはいえ、出演者やスタッフなど何もあてがなかったし、モンゴル
のことももっと知らないかんなと思って、もう一度モンゴルに行き
ました。ダワージャブの息子ザヤーと連絡とって会ったら、幸運な
ことに彼は日本語を勉強していたんです。彼に映画のことを説明し
たら、二つ返事でOKしてくれました。
その夏は彼とずっと旅してました。一緒に西へ東へいろんな音楽の
名人やいろんな人を訪ねて…。それでだんだんこの映画に内在する
ものが見えてきたんです。


kamei_s.jpg
上映初日にジャック&ベティに来館した亀井岳さん
Q:ところでこのザヤー君は、なんとなく野球の松坂投手に似てま
すね。
亀井:彼に一番最初に出会った頃はめっちゃやせてたんですよ。で
も半年後に会ったらめっちゃ太ってて(笑) 撮影の途中で散髪して
きたり、そんなんばっかでもう力抜けますわ。まあ大らかな人です。

Q:言葉の問題はどうされたんですか?
亀井:モンゴル語はできません。ザヤーの友達で日本語学んでる若
者が二人くらい手伝ってくれました。


★詩のような映画を作りたかった

Q:監督が積極的に動いた結果、いろんな人との出会いが生まれて
この作品が作られていったんですね。ところで、モンゴル人との文
化や民族性の違いから大変だったエピソードなどはありますか?
亀井:いっぱいありますよ(笑) 毎日ですよ。もうあかんと毎日思
ってました。例えば、ホテル予約しとけと言ったら絶対大丈夫、そ
んなんせえへん普通って、で行ってみたら部屋ないんですよ。
どうすんねんって言っても、しょうがないっていう。そんなんばっ
かですわ。

Q:事前に計画を立てておくとかあまりしなそうですよね。
亀井:驚くほどしないですね。例えば映画に出てくるバスですが、
このバスに決まるまでも大変でした。運転手にビール飲ませながら、
映画で使うんで、この席全部借りるからと伝えて、正月は帰省する
学生が多いけど、学生では画にならないから普通のおじさんおばさ
ん子供とか乗せて欲しいと頼んでおいたんです。それで行ってみた
ら学生でいっぱいなんです。これじゃあかんと言ったら、逆にキレ
出したり…そんなんが2台続きましたわ。で、最終的に決まったの
が偶然にも僕が一人旅で乗った運転手さんの車だったんです。


Q:監督は彫刻もやってらっしゃいますが、その経験が映画に生か
されたということもあったんでしょうか?
亀井:どちらも組み立てていくという点は同じです。空間を構成す
る彫刻と同じように、映画でも空間を表現してみたいと思ってまし
た。あと、ロードムービーにしたいなというのは考えてました。そ
の中で空間をどう表現するかと。みんなが仲良くなるというちょっ
としたストーリーで空間が表現できるんじゃないかと考えて作りま
した。僕は映画は引きの画面だけでいいんちゃうかと思ってまして、
遠くで人がもごもご喋っていて、観てる人はそれを想像するという
映像だけで映画作れるんじゃないかと思ったりします。


Q:
この作品は脚本にしたがって作られていますが、ドキュメンタ
リー的な要素もあり、それがうまく融合していると思いました。
亀井:なぜドキュメンタリーにしなかったのかとよく聞かれます。
自分には、この作品は「詩」にしたいという欲求がありました。詩
のように、抽象的で想像力に訴えかけるようなものにしたかったの
です。映像は現実であり具象的です。その中に抽象性という相反す
るものをいかに内在させるか、それが詩になりえるか、詩として成
立させることができるかが大切なんです。


★貧乏に耐えられるのも才能

Q:具体的なお話なんですが、予算はどのくらいだったんですか?
モンゴル大使館とかから助成金が出たりしたんですか?
亀井:完全に自己資金ですね。お金のことは何も考えないで撮影を
始めたんです。ま、これ後輩なんですけど、10万くらい出せよ、も
う10万出るやろ!とか(笑) いろんな人にお世話になりました。費
用は全体で130万くらいでした。一番大きかったのが5往復した
交通費ですが、溜まったマイレージ使って節約したり、そんな感じ
ですわ。


Q:映画を作ったとき、劇場で上映することは考えていましたか?
亀井:上映のことはまったく考えていませんでした。上映すること
に対するこだわりがなかったんです。おそらく彫刻やってたからだ
と思うんですが、いいもの作ったら結果は後からついてくるだろう、
程度にしか考えてなくて。でも映画祭出したら、多少人に観てもら
えるんかなと思って、ぴあ(ぴあフィルムフェスティバル)と山形
(山形国際ドキュメンタリー映画際)に出してみたんですが、どっ
ちも一次で落ちました(笑)。すごいガッカリしたんですが、まあこ
んなもんかなと。自分ではやりきったと思ってるんで、懲りずに次
作ろうかなと切り替えました。


Q:そのモチベーションはどこから生まれてくるんですか?
亀井:なんでもうまいこといくわけではないですし、やりたいこと
がいっぱいあってもやれずじまいの人は多い。限られた時間の中で
やっぱり一つずつクリアしていきたいと思ってますね。絵や音楽や
文章の才能がある人はたくさんいると思いますが、お金を稼がなく
ても平気だったり、打たれ強かったり、そういう才能のほうが大事
なんかなと思いますね。自分はお金はないですが、そういう才能は
あるんじゃないかと思ってます。
(後輩のほうを振り向き)
な、頼むでっ(笑)


★監督になりたいと思ったことはなかった

Q:初めて映画を観たときのことを教えてください。
亀井:父親が映画好きでよく連れていってもらいましたね。小学校
2年のとき「スターウォーズ」を観て衝撃を受けました。その直後
に東映の「宇宙からのメッセージ」を観て、あまりのヘボさに子供
ながらに愕然。小学校2年やで?ものすごい落ち込みましたわ。
当時は小さい映画館がそこら中にあったんですが、大阪のタナベキ
ネマにはよく行ってました。成人映画もよくやってました。映画館
は文化の最先端であり、ドキドキする場所でしたね。


Q:子供の頃、映画の道に進もうとは思わなかったんですか?
亀井:実はこれは初めて話すことなんですが、高校のとき映画研究
部に入っていたのを思い出しました(笑) しかも部長。8mm映画を
作って文化祭で上映したりもしました。今思うと、何でそんなこと
ができたのか思い出せないくらいですが。あと、東宝東和での試写
会の手伝いしたりしてたくさん観てましたね。でも映画監督になろ
うとは思っていませんでした。組織の中で協調性をもってやれる自
信がなかったし、映画は観るものと思ってましたから。


Q:実際に自分の映画を映画館で上映してみてどう思いましたか?
亀井:映画を人に観てもらうってことがこんなに重要なのかって気
づきましたね。映画を観て応援してくれる人がたくさん出てきて、
上映実行委員会作って応援してくれたり。彫刻は一人でやってて、
応援してもらえることもあまりないので、映画の力に驚いて、感激
しています。やっぱり映画は上映されなダメなんやなと。いろんな
意見をもらえるし、よかったなと。


Q:3月から上映が始まったわけですが、かかった費用くらいは回
収できそうですか?
亀井:いや、ぜんぜんですよ。むしろ、いまどんどん出ていってる
状態で、やればやるほどあかんようになっていってます。もう100%
回収は無理だなと。大阪からの交通費や、動いている人間がたくさ
んいますし。それで終るんちゃうかなと。でもそれでいいと思って
ます。


Q:先ほど、原一男さんにお話を聞いたんですが、原さんほどの巨
匠でも資金を集めるのが大変だと言っていました。映画制作では、
お金の問題は重要ですし、大変ですね。
亀井:まあそうですね。原さんみたいな人は誰か資金出して自由に
作らせるくらいじゃないとダメですよねえ。
メジャーな人でなくても頑張っている人はたくさんいて、そういう
人たちの作品を観てもらえるような場を作ったり、あるいは作品作
らすチャンスを与えたり、やりようなんじゃないかなと思いますね。
表現者として面白い人はたくさんいますから。


★映画館は怪しい場所であってほしい
Q:これから監督の作品は映画館で上映されることと思いますが、
映画館に対して思うこと、期待することはありますか?
亀井:やっぱり、映画館は子供が来るような場所になって欲しいな
と思いますね。ポップコーンや綿菓子とかそういうんじゃなくて。
昔自分が体験した劇場は、見世物小屋のような雰囲気があったよう
な気がします。怪しい感じで、へんなおっちゃんがいたり。PTA
から映画館なんか行っちゃだめと苦情が来るような、そんな場所で
あってほしいと思います。
携帯で学校の裏サイトとか見てるくらいだったら、映画館に来て、
独特の匂いをかいで欲しいですね。その場に行って何を感じるか、
その場で強烈な動機や突き動かされる何かを体で感じることが大切
なんだと思います。

Q:小さい子をモンゴルにでも送り込んだほうがいいですね。
亀井:そうですね、どっかわからんようなところに置いて帰ってく
るとかね(笑) 小学生の頃、親父と「レイジングブル」観たとき、
なんでこんな濡れ場のあるもの見せんのかなと思ったけど、そうい
う体験が重要なんじゃないですかね。


Q:ところで、出演者やチャンドマニの人たちはこの映画を観たの
ですか?
亀井:まだ観せてません。でも、ある旅行会社との企画でチャンド
マ二まで行ってこの映画の上映会をするというツアーを開催するこ
とになっています。向うは劇場なんてないんで、壁に映すか、布を
張って上映することになるでしょう。

Q:それはいい企画ですね。次回作も楽しみにしてます。
亀井:はい、次はメキシコで作ろうと思ってます。応援してくれそ
うな人がいたら紹介してください。若くてプロデューサー志してい
る人と知り合えたらいいなと思ってます。

Q:今日はありがとうございました。


2010年5月8日(土) ジャック&ベティ応接室にて


<プロフィール>
亀井岳(Kamei Takeshi) 監督・脚本・編集・制作

1969年生、大阪府出身。大阪芸術大学美術学科卒業、金沢美術工芸大学大学院修了。2001年、造形から映像制作へと転身。07年モンゴルの旅でホーミーと出会い、映画制作を強く思う。08年モンゴルで撮影、09年夏、映画『チャンドマニ ~モンゴルホーミーの源流へ~』を完成。同年10月渋谷アップリンクにて先行上映会をおこなう。現在、次回作を準備中。

★公式サイト

<参考資料>
モンゴルのホーミー~ガンボルド、ヤヴガーンモンゴルのホーミー~ガンボルド、ヤヴガーン
(2008/07/09)
グンデンビリーン・ヤヴガーン タラブジャビーン・ガンボルドタラブジャビーン・ガンボルド

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