100年後の映画館のために

映画館元副支配人による映画と映画館をめぐるインタビューの記録

2010-10

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傷ついたままではいやだった(リンダ・ホーグランドさん)

<アート>とは何なのか? 
「60年安保闘争」という歴史的事件をアーティストの作品と証言で読み直す画期的な
ドキュメンタリー。監督は、数々の日本映画の英語字幕を担当し、
『TOKKO/特攻』(2007年)ではプロデューサーとして関ったリンダ・ホーグランドさん。
これが監督としてのデビュー作となる。

この作品に登場するアートはどれも、芸術の根源的なエネルギーを感じさせる強烈なもの
ばかりだ。アートといえば、いまジャック&ベティのある町、黄金町では町おこしの一環
としてのアートイベントが行なわれている。かたや、個人的な抵抗の表出としてのアート。
かたや、明るく健全で、誰からも親しまれるアート。対照的な二つのアートのあり方につ
いて、監督はどう考えるか聞いてみた。

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第17回: リンダ・ホーグランドさん(『ANPO』監督)

tirashianpob.jpeg
『ANPO』シネマ・ジャック&ベティにて絶賛公開中!
<10/2(土)~10/8(金)>16:30~18:05
公式サイトはコチラ


アートの衝撃、そしてANPOへ
Q:いまなぜ「安保」なのか、そしてそれをなぜアートという切り口で読み直
そうとしたのかを教えてください。

L・H:私は日本で生まれ、中学生まで日本で暮らしました。西川美和監督が
私のことを、娼婦(日本)とヒモ(アメリカ)の間に生れ落ちた監督と言って
くれましたが、それは日米のねじれた関係の中で生まれ育った者が宿命的に感
じる居心地の悪さです。私は恥ずかしながら、「安保」のことについて何も知ら
ないで育ちました。10歳の時に授業でアメリカが日本に原爆を落としたとい
う事実を知りました。先生が原爆の悲惨さを語り終えたとき、クラスメイトの
視線がいっせいに私に向けられました。このとき私は自分が戦争の加害者の側
に組み込まれたことを初めて自覚したんです。10歳という年齢で、こんな重
い事実は消化しようがありませんでした。勝ったほうの国は、負けたほうの国
の悲惨な事実のことは知りません。勝った側と負けた側でまったく歴史観が違
うんです。その大きな矛盾の中で育ったことが、この映画を作った原点です。

 その後、大学はアメリカで学びましたが、ずっと日本映画に関わっていきたい
と思ってきました。そして、これまで多くの日本映画を観て紹介したり、字幕
を書いたりしてきました。あるとき、『にあんちゃん』(59年)ではあんなに
希望に溢れる映画を撮った今村昌平監督が、『豚と軍艦』(61年)では、横須賀
を舞台にものすごく風刺の効いたブラックな作品を作っていることに気づき、
この変化は何なんだろうと思いました。また、政治的なものを撮らない黒澤さん
も、『悪い奴ほどよく眠る』(60年)では露骨に政治汚職を描写していますし、
大島渚監督も安保闘争を題材にした『日本の夜と霧』(60年)を撮っています。
これらの映画から、60年という時代に一体何があったのかと疑問を持ったこ
とが、安保について考えるきかっけになりました。また映画以外でも、
東松照明さんの長崎の写真を見て衝撃を受けて、作品の背景となった戦争や
日米の関係などの歴史をもっと勉強しようと思うようになったんです。

 安保闘争のことを知って一番ショックだったのが、国会に警官が500人動員
されて、議員を引きずり出して法案を強行採決し、そのまま50年間内容がま
ったく変わっていないという事実です。アメリカでそんなことが起きたら内乱
が起きます。岸信介首相のバックにはCIAがいましたからそういう事態は起き
ませんでしたが、民主主義を信じていた当時の若者に与えたショックは計り知
れないものがあったはずです。もう一つこの映画を作るきっかけとなったのが、
濱谷浩さんの『怒りと哀しみの記録』を見たことです。この写真集には、建前
なんてなくてホンネの顔をしている日本人が写っていました。その顔はいった
いどこからくるのか?また、中村宏さんの『砂川五番』をテレビで見たときも、
こんな絵が日本にあるのかと衝撃を受けました。これらのアートから感じる
自由さとエネルギーはいったいどこからくるんだろう? これらの答えを探す
中で、60年安保に行き着いたんです。だからアートが先だったんです。アート
がなかったら安保のことを知ろうとは思わなかったかもしれません。アートを
発見することが、そのまま映画を作ることだったんです。

anpo01.jpg
リンダ監督と写真家の石内都さん

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