100年後の映画館のために

映画館元副支配人による映画と映画館をめぐるインタビューの記録

2010-08

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劇場体験は人生に何らかの影響を与える(伊藤孝司さん)

『ヒロシマ・ピョンヤン』は、ヒロシマで被爆した北朝鮮人の親子を取材した
ドキュメンタリー映画です。北朝鮮人の被爆者といわれてもあまりピンとこない
人が多いのではないでしょうか。この作品は知られざる事実を私たちに突きつけ、
戦後65年経ったいまもまだ戦後は続いているということを改めて認識させて
くれます。8月は映画を通じて戦争について考えてみてはいかがでしょうか。

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第14回:伊藤孝司(『ヒロシマ・ピョンヤン』監督)

tirashihirosimapyd.jpg
『ヒロシマ・ピョンヤン』
シネマ・ジャック&ベティにて上映中!
~8/13(金)12:40~14:15
以降の上映予定は公式サイト

★北朝鮮で暮らす被爆者のことを知っていますか?
Q:この作品を作った経緯を教えてください。

伊藤:81年から広島と長崎を取材するようになって、韓国人・朝鮮人の
被爆者がいるということを初めて取材するようになりました。私はこれまで、
日本がアジアに戦争で及ぼした被害について様々な対象を取材してきました
が、実は最初にまとめたのが『原爆棄民―韓国・朝鮮人被爆者の証言』(1987年)
という、韓国人、朝鮮人被爆者の問題を扱った本でした。この問題はジャーナ
リストとしての私の原点でもあり、今回の映画はその原点に帰ってきたという
思いがあります。
 95年以降、デジタルビデオカメラを手に入れて映像でも記録するように
なりました。音声を残していく必要性を感じたからです。テレビでも映像を
発表してきましたが、テレビだとどうしても視聴者からの反応が伝わってこ
ないので手ごたえが感じられませんでした。また、撮ったものが短く編集さ
れてしまうことにも不満を感じていました。そうした中で新しく自分の作品
を作ろうと考えたとき、自分の原点である被爆者をテーマにしたものを撮る
ことにしました。

Q:作品のテーマや題材はどのように決まったのですか?

伊藤:2007年にこの映画の主人公である李桂先(リ・ゲソン)さんが、
日本に被爆者健康手帳を取りに来るという話がありました。北朝鮮との国交
がない今、在朝被爆者が例外的に来日するということで関係者はかなり期待
したのです。このとき、この出来事を映画として記録できないかと考えまし
た。当初の計画では、まず平壌(ピョンヤン)に行き、彼女が日本に来るまで
を追い、来日して広島の母親と会い病院に行って帰国するまでを記録する予
定でした。ところが、李桂先さんの同行者の入国問題で来日は実現しません
でした。いったんは諦めかけたのですが、在朝被爆者は唯一、国が手をつけ
ていない被爆者問題という状況もあり、これは絶対に自分がやらなければな
らないと思い直しました。

Q:李桂先さんを主人公にしたのはなぜですか?

伊藤:12人の在朝被爆者を取材した中で、健康状態がもっともひどく、
手帳を巡る問題や、広島のお母さんに会いたいと熱望されていることなどから、
李桂先さんが適任だと判断しました。センセーショナルなシーンは撮れないので、
一人の在朝被爆者の日常を淡々と撮って、彼女の思いや病気の状況、在朝被爆者
問題の全体像を明らかにする作品にしようと考えました。

Q:撮っていく中で監督ご自身の気持ちに何か変化はありましたか?

伊藤:日本にいると、北朝鮮の人たちの暮らしはまったくわかりません。
韓国では、かつては北の人たちは頭に角が生えているなんて教えていた時代が
あったくらいです。でも、李桂先さんのアルバムを全部借りて平壌のホテルで
見ていたとき、一人の女性の人生が見えてくるとともに、北朝鮮という国の姿
が実感として見えてきました。被爆者でありながら、核がないと自分の国が守
れないとして自国の核実験を肯定し、そういう国の指導者に対して心からの敬
愛の念を抱いていることなど、私たちには理解しがたいこともあります。です
が、そういうことも含めて北で暮らしている人たちの素直な気持ちを取材する
ことができたのではないかと思います。

hiropyong.jpg
J&Bの横壁にて。

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