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100年後の映画館のために

映画館元副支配人による映画と映画館をめぐるインタビューの記録

2010-07

居場所が無かったら映画館に行けばいい(小野さやかさん)

とにかく体を張っている。全編に、張り詰めた緊張感、生々しさ、切実さが溢れ、
映画で描かなくてはならないという強い意志が漲っている。
ここまで体当たりで、イノチガケな映画は滅多にない。
師匠である原一男作品を彷彿とさせ、原監督自身も絶賛したドキュメンタリー映画
『アヒルの子』の監督・小野さやかさんに話を伺いました。

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第12回:小野さやかさん(『アヒルの子』監督)

tirashiahirunkoka.jpeg
『アヒルの子』
←公式サイトへ
シネマ・ジャック&ベティにて上映中!
7/24(土)~7/30(金)19:55~21:35
※26(月)~30(金)は小野さやか監督来館予定


★どうせ死ぬなら、映画を撮って死にたい
Q:しかし、本当に最初から最後まで涙の量が半端じゃない映画ですね。撮影期間はどのくらいだったんでしょうか?

小野:2004年7月から12月までの半年くらいです。

Q:半年間泣きっぱなしだったわけですね。期間中、少しは笑ったりするときもあったんでしょうか? カメラが回ってないときとか。

小野:いや、本当に一切笑ったりしませんでした。スタッフと一緒に青春18きっぷで、12時間くらいかけて東京から愛媛まで行ったときも、ずっとしかめっ面で、異様な空気を作り続けていました。

Q:その状態を維持し続けるのは大変ではなかったですか?

小野:撮影当時は20歳で、家族の中にカメラを持ち込むという中で、家族の中でいい子であった私は、撮影を通して常に限界を超えるという緊迫状態でした。出演者でもありながら演出というポジションでもあったので、終わるまでは、私が気を抜いてしまってはいけないと思っていました。ここで諦めてしまっては答えが見つからないというか。作品が形になるまでは絶対にやり遂げなくてはいけないという気持ちでした。

Q:スタッフと一緒にいる時間と、プライベートの時間とで切り替えていたのでしょうか?

小野:
最初の1ヶ月は独白シーンの撮影で、部屋にカメラを固定して、家族に対する呪詛の言葉を吐き出すという撮影をしました。毎日思うことがあればカメラの前で話し、感情の殴り書きのようなものをスタッフに書いて渡しました。分量では160枚
くらいになるかと思います。撮影当初は、スタッフのことを誰一人信用することができず、映画を作るための必要最低限の人数でチームを結成しました。ただ、撮影の山内大堂はカメラセンスが抜群にうまかったので、彼の家まで行ってスタッフとして
入ってほしい、とくどきおとしました。山内には「風呂だろうとトイレだろうと、山内が必要と思えば(カメラを)まわせ。」と言い、スタッフと撮影でもめた時には「この作品が完成しなければお前ら全員殺す」と言っています。それ程、家族を傷つけてまで
映画を撮る責任を、スタッフにも同様に感じてほしいと思っていました。なので、撮影終了時まで気を抜く暇はなかったように思います。

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小野さやかさんと編集を担当した大澤一生さん。ジャック&ベティの応接室にて。

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テーマ:インタビュー - ジャンル:映画

映画は人の心を深く動かす(藤本幸久さん)

ドキュメンタリー映画「One Shot One Kill」は、
アメリカ海兵隊のブートキャンプでの、「普通の若者が戦場で
人を殺せるようになる」までの12週間の訓練に密着した作品です。
間違いなく現実に起こっていることを記録した映像でありながら、
悪い夢でも見ているような超現実的な映像の連続に圧倒されます。
今回はこの作品を監督した藤本幸久さんにお話を伺いました。

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第11回:藤本幸久さん(映画監督)

osok.jpg
『One Shot One Kill―兵士になるということ』
ジャック&ベティにて、6/27~7/9まで上映(終了)
今後の上映予定は、公式サイト


★普通の若者がなぜ人殺しになれるのか

Q:たいへん面白く拝見しました。面白いというと語弊があります
が…とにかくシュールで、非日常的で、自分も洗脳されてしまうの
ではないかと、観てて恐くなりました。

藤本:「面白い」と思ってもらっていいんです。この作品を通じて、
戦争に関係のない人でも、兵士になって、人殺しができるようになる
ということを描きました。アメリカだけでなく、日本にいる若者も、
自分もこの映画に出てくる若者たちと変わらないということを想像
しながら観てもらえればと思っています。
『ONE SHOT~』は、『アメリカ―戦争する国の人びと』というもう
一本の作品と同時期に撮影した兄弟のような作品です。
『ONE SHOT~』のほうでは、若者が兵士になるまでを描きましたが、
彼らが戦場に行ってどんな経験をしてきて、その後の人生にどう
つながっているのか、ということを長い時間をかけて描きたかったんです。
『ONE SHOT~』は作品としては完結していますが、入隊してから
もう2年くらい経っているので、彼らがいまどこでどんなことを
しているのか、ぜひ今後も追っていきたいですし、4年で除隊する人が
多いのでその後の彼らの人生がどうなっているのか、かつて希望を持って
入隊した彼らの夢はかなえられたのかどうかということが描ければ説得力の
あるものになるのではないかと考えています。
かつてベトナムでいろいろ経験した人たちと、新たに兵士になった人たちの
人生が重なっていくということまで撮ってみたいですね。

Q:『ONE SHOT~』の中でインタビューに答えている若者はどのように
選んだのですか?

藤本:僕たちがリクエストを出して、軍が選びました。条件として
マイノリティの兵士を取材したいと伝えたところ、彼らに決まりました。
おばあさんが日本人の日系三世の若者と、お母さんが日本人の日系二世
の子と、フィリピンから移民してきた若者の三人です。
おばあさんが日本人という子は、戦後日本に駐屯していた米軍との間に
できた子供がアメリカに渡ってできた子供でしょうし、お母さんが
日本人だった彼のお父さんは、海軍兵士だったのでおそらく横須賀に
いた人だと思います。
マイノリティとして、それぞれ背景にドラマを持った若者たちが、
軍に入ってどういう人生を送っていくのかというのは関心があります。
彼らを今後も引き続き撮影できたらと思っています。


oneshot01.jpg
上映初日に来館した藤本監督。J&Bのロビーにて。

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